| +Halloween's day+ |
|---|
今日は10月31日。 世間は1月程前からハロウィン一色……でもないが、あちらこちらで紫や橙が目立つ。 ここプリベンターでもそれは例外ではなかった。 イベント事には全く関係ない組織であるにも関わらず、社内はハロウィンモードだった。 ただでさえ人手不足なのに誰が飾り付けていたのか……。 レディ・アンであっても所詮は女性。 イベント事には勝てないということか。 こんな事をしている暇があったらもっと任務をこなすべきだと俺は思う。 まぁ社内がどうであれ俺には関係のないことだ。 書類に一通り目を通し、俺は今日の仕事を終えロッカールームに向かった。 その途中サリィに声を掛けられた。 「ヒイロ!ちょうどよかった。」 探していたのよ、と続けて俺に二つの袋を差し出した。 「はいこれ。あっ、こっちはデュオの分ね。」 「……何だこれは?」 「お菓子よ。みんなに配ってるの。」 いらないと返そうとしたが、無理やり押し付けられ渋々受け取った。 それに気を良くしたのかサリィは笑顔で去っていった。 「ヒイロ!今日はいたずらしちゃダメよ!」 そんな訳のわからないセリフを残しながら。 誰がするか!と心の中で叫びつつ俺も本社を後にした。 俺は歩きながらもう一人イベント好きな奴がいることを思い出した。 アイツも好きそうだな。 今日辺りカボチャ料理が食卓に並ぶのだろうか。 アイツとならそれも悪くないなと思う自分は甘くなったと思う。 部屋がどんな風に変わっているのか、アイツがどう俺を出迎えてくれるのか、 そんな事を少し想像しながら俺は家路を急いだ。 リビングに続く扉を開けると、そこはいつもと同じ光景が広がっているだけだった。 「おっかえりー。早かったな。」 キッチンの方からデュオの声がした。 「ただいま。」 そう声を掛けながらキッチンに近づいていく。 「お前今日帰ってくるの早かったからまだ晩飯できてないんだよ。」 振り返らずにフライパンと格闘してるデュオが続けた。 「先に風呂入って来いよ!」 その間にできるからさ、と続けて漸くこちらに振り向いた。 その表情はいつもと同じ笑顔で別段変わった所はない。 少し背伸びしてフライパンの中を覗けばそこにはカボチャなんてものはなく、 野菜炒めが美味しそうに湯気を立てていた。 (カボチャはどうした?) そんな疑問が心の中で浮かぶ。 もしかしたらデザートに出てくるのだろうか。 そんな事をいちいち確認するのは、俺がハロウィンを待ち望んでるようで嫌だ。 「ヒイロ?」 デュオがフライパンの中を覗き込んだまま動かない俺を見て声を掛けてきた。 「何でもない。」 風呂に入って来ると言い残して俺はその場を去った。 いつもと何も変わらない他愛無い会話を楽しみながら食事は終わった。 食後の後片付けを俺が引き受け、デュオは風呂に入りに行った。 その背中を無言で見送る。 洗い物をしながらデュオの事を考えていた。 デュオからはハロウィンのハの字も出てこない。 こうなってくるとこの話題を避けてるようにも受け取れる。 あんなにイベント好きのデュオが何故ハロウィンを嫌うのだろう? 聞きたいような、でも聞いてはいけないような感覚が自分の中に存在している。 特に変わった様子がないだけに聞き辛いというのが現状だ。 何か切っ掛けがあればいいのだが……。 と、そこまで考えてその切っ掛けがあることを思い出した。 先程サリーに無理やり持たされたハロウィンのお菓子。 俺は急いで洗い物を済ませ部屋に戻った。 鞄の中からお菓子の袋を取り出していると、ちょうど風呂から上がったデュオが入ってきた。 「珍しいな、もう寝るのか?」 髪の毛をわしわしと拭きながら近づいてくるデュオ。 俺は目の前に先程のお菓子を渡してやった。 「サリィからだ。」 「何これ?お菓子?」 「今日はハロウィンだからな。」 「あっ、ナルホドね。」 サンキュと普通に受け取るデュオ。 やはりどこか素っ気ない気がするの俺の気のせいだろうか。 「お前はこういうイベントが好きだと思っていたが……。」 ずっと聞きたかったことを漸く尋ねる事ができた。 「えっ?」 「ハロウィンだ。お前の事だからカボチャを部屋中に飾っていると思っていた。」 更に言えば、今日はカボチャスープから始まりカボチャプリンで締めると思っていた。 それを結構楽しみにしていたなんて事は言わないが。 「別に……嫌いな訳じゃないけど……。」 そう言いながらデュオはベッドに腰掛けた。 何か考え込むように俯いたまま動かないデュオ。 俺はそんなデュオの隣りに腰を下ろした。 「けど?」 俺は先をゆっくりと促す。 「………ジャックランタンは好きじゃない。」 「何故だ?」 俺は素朴な疑問を口にした。 「お前ジャックランタンの意味って知ってるか?」 意味……鬼火や火の玉の事を言ってるのではないようだった。 俺が黙ったまま考え込んでいるとデュオがぽそぽそと話しだした。 「ジャックランタンは昔はちゃんとした人間だったんだよ。 生前に真面目な生活を送ってなかったから地獄に行く事になったんだけど、そいつは嫌だって反対したんだ。 そしたら地獄に行かなくてよくなったんだけど、天国に行ける訳もなくてさ、 永遠にあの世とこの世の間を彷徨ってるんだ。」 そこで言葉が途切れた。 デュオの言わんとしてることがまだよく解からない。 「それとお前が嫌いな理由は関係あるのか?」 「だって……俺も同じだから。」 「デュオ?」 「そうだろ?俺は沢山の人間を笑って殺してきた死神だ。本当は死ぬはずじゃなかった人間も関係なく……。 そんな俺が天国になんか行けるはずがねーじゃん。地獄にだって見放されてるのに……。」 一生一人で彷徨う運命なんだよ、と力なく笑うデュオは本当に全てを諦めているようで。 俺はデュオの手をギュッと握り締めた。 「ヒイロ?」 「だったら俺も同じだ。俺も天国にも地獄にも行けない。」 沢山の罪なき人を殺してきたのは自分も同じなのだから。 「お前は違うよヒイロ。」 「違わない。」 「お前はキレイなままだから天国に行けるって。」 コイツは……なぜ俺の言葉を信じられないんだろう。 なんで俺の事を綺麗だと言うんだろう。 そんなに死んだ後の事が気になるのだろうか。 だったら約束してしまえばいい。 「もし神が俺に天国に行けと言っても俺は断る。」 「なっ!」 「俺はお前と一緒がいい。今もこれからも。もしお前が一人で彷徨うのなら俺も一緒だ。」 そんな離れ離れの世界なんて俺には関係ない。 「だからずっと一緒だ。」 デュオをそっと自分の胸に抱き締めて何度でも囁いてやる。 子供のように死んでからの世界を気にする寂しがり屋の死神をもう一人にはさせない。 「お前が嫌がってもな。」 「……嫌なわけないじゃん。」 ぼそっとデュオが呟いて、俺の背中に腕を回す。 俺は一度ギュッとデュオを抱き締めた。 そっとデュオを見やれば恥ずかしいのか顔が赤い。 どうやって顔を上げようか考えてるといったところか。 自分から上げれないのなら上げさせればいい。 「Trick or treat.」 「何?」 俺はそう言いながらデュオの首筋に唇を押し当てた。 「トリックオアトリートだ、デュオ。」 そのまま軽く耳朶を噛んだ。 「うわっちょっヒイロ!」 ガバっと俺から勢いよく離れたデュオは更に顔を真っ赤にして耳を押さえている。 その姿が可愛くて思わず笑ってしまった。 「わ、笑うなよ。」 「すまん、つい……な。」 そう言って今度は二人で笑った。 「デュオ。」 「ん?」 「お菓子はいいからいたずらさせろ。」 「なっ!」 「返事は?」 俺はデュオをベッドに横たえてその上に乗り上げた。 「ったく、しょーがねーな。」 照れながらデュオが腕を首に伸ばして来たのを合図に俺たちは深い口付けを交わした。 翌日、隣りに居るはずの温もりがないことで目を覚ました。 デュオがいない。 辺りを見回せば寝室のドアが開いている。 そっとベッドから降りてリビングに向かう。 「うーちゃん、聞いてくれよ!」 何やらデュオの話し声が聞こえる。 (通信か?) 「ヒイロの奴昨日何て言ったと思う?トリックオアトリートって言ったんだぜ!」 ギャハハーと馬鹿笑いが聞こえてくる。 「可笑しいだろ?あのヒイロがだぜ?」 『デュオ……。』 「何うーちゃん。」 『後ろ。』 「何の話をしている?」 「?!……ヒイロさん……起きた…のね。」 「ああ、お前のその馬鹿笑いのお陰でな。」 『相変わらずだなヒイロ。』 「五飛、続き聞きたいか?」 『……いや遠慮する。』 「そうか、残念だな。あの後デュオがどうなったか聞かせてやろうと思ったんだがな。」 「わわわ、ヒイロやめろ!」 「何故だ?聞かせてやればいいだろう?」 あの後デュオがどうなったのか。 「うわ〜やめろってヒイロ。頼むから〜。」 俺が悪かったからと泣きそうになりながら頼んでくるデュオは朝から可愛い。 『貴様ら……勝手にやってろっ!!』 ブチッとそれだけを残して通信は切れた。 「………。」 「………。」 「と、とりあえず朝飯にする?」 「……ああ。」 そそくさと仕度を始めるデュオ。 その姿を見ながら覚えておけよ、と思う俺だった。 あとがき なんとかぎりぎり間に合ったハロウィン話。 明るくて甘い話にするはずが、書けば書くほど変わっていった(-_-;) でも最後はちょっことだけ甘くできたかな? なんか自分でもあんまり意味がよくわからん話しになってますが皆様は大丈夫でしょうか? デュオは一人で彷徨うのも嫌だったんですけど、 ヒイロや自分の知ってる人達を案内すると言うか導くのが嫌だったんですね。 自分だけが取り残されて行く恐怖とでも言いましょうか。 まぁそんな感じです(大汗) こんな話でよかったらいりますか〜?なんてね(笑) 2006.10.30 葵 |